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『経済倫理=あなたは、なに主義?』

アンケート結果2008

 

1.

龍谷大学経済学部にて、小峯敦先生の講義を履修している学部生たちを対象に行ったアンケートの結果です。2008927日)

 

新保守主義 4

新自由主義 9人

リベラリズム(福祉国家型) 30人

地域コミュニタリアニズム 1人

リバタリアニズム 2人

マルクス主義 該当者なし

平等主義 6

 

支配者嫌悪主義/耽美的破壊主義 6

近代卓越主義 12

共和主義 13

YXYX(市民的コミュニタリアニズム) 1人

自分の立場がわからないと答えた人 1人

 

以上 計85人

 

 

 この度は、講演会に出席され、アンケートにお答えいただいた学生の皆様、講演会の全体を企画し司会を務めていただいた小峯敦先生、そしてパネリストの皆様、研究会に出席された皆様、裏方で設営をしていただいた皆様に、厚くお礼申し上げます。ありがとうございました。

 アンケートの結果は、85人中30人がリベラリズムを選んだということで、予想以上にリベラリズムが支配的となりました。その次に多いのは、共和主義、近代卓越主義、と続きます。新自由主義を選んだ方もそれなりの割合でいますが、コミュニタリアニズムやマルクス主義を選んだ人はほとんどいないということに、私は驚きました。立場を選ぶというのは、大変難しいことです。皆さんどうぞ、このアンケートの結果にとらわれずに、自分の考え方を少しずつ形作っていってください。

 アンケートの際に書き込んでいただいたコメントに次のようなものがありました。

 

先生方の話の中で例として「自分はお金がない(働いているのにetc…)なぜた!? 」と考えた時、ある人は革命家になる、ある人は犯罪者になる、ある人はウツになるなど、人によって違い、では自分は何になるか?と考える時とてもいい!!と聞き「なるほど」と思いました。/雑誌などでも心理テスト風に「あなたは○○タイプ」とかはありますが、このように経済的なタイプ(主義)というのを知ることができるのはとても面白いと思いました。

 

 ありがとうございます。最近の学生は、お金がないのに「新自由主義」を支持しているという場合があって、それってなぜだろう、と思うことがあります。新自由主義というのは、支配階級のイデオロギーなのかというと、そうでもないようです。リベラリズムも同様に、下部構造とはあまり関係のないところで、多数派の見解になっている可能性がありますね。

 もう一つのコメント(質問)を紹介します。

 

橋本先生が「50年前にはマルクス主義がもっといてもおかしくなかった」とおっしゃられた事について、このマッピングによる主義の違いの差、50年前から現代にむかうまでの若者の主義の変化は、何が原因なのでしょうか?

 

 そうですね、私が書いた『自由に生きるとはどういうことか』という本のなかで、戦後日本の若者たちが現代に至るまで、どのように考え方を変化させていったのか、ということを論じています。「経済倫理」というよりも、「社会意識」の変化についてですが、とくに、いまから40年前の1968年頃の若者たちが、なぜマルクス主義にのめりこんだのかについては、興味深い理由があります。マンガ「あしたのジョー」のような生き方を理想として、マルクス主義に向かっているのです。第3章「真っ白な灰に燃え尽きろ」を御笑覧いただけると幸いです。

 

 

 

■ご案内

2008年度

大学院経済学研究科:主催 

講演会『経済倫理:あなたは、なに主義?』

 

日時:9月27日(土曜)15:00-16:30

場所:龍谷大学深草学舎:3号館1階101教室

 

論題:『経済倫理:あなたは、なに主義?』(講談社メチエ)合評会

 

著者:橋本努(北海道大学大学院経済学研究科)

討論者:村澤真保呂(龍谷大学社会学部)、篠原雅武(日本学術振興会

    特別研究員)、水溪悠樹(経済学部4回生)

司会:小峯敦(龍谷大学経済学部)

 

主催:龍谷大学大学院経済学研究科

後援:龍谷大学経済学会

対象:学部生・院生、および研究者を含む一般聴衆

備考:入場無料、予約不要

 

★会場で生協購買部による本販売の予定(15%引で予価1428円税込)

★なお講演の模様はデジタル撮影され、後ほどストリーミング配信される予定

★また講演の模様は後日、『経済学論集』(経済学会発行)に収録される予定

 

 

(本紹介)講談社のホームページよりhttp://shop.kodansha.jp/bc/books/metier/

 いま私たちは、かつてないほど発達した市場経済の中に生きている。そして私たちは、あるときには市場の「効率性」を評価し、またあるときには市場の「失敗」をきびしく批判したりする。

 では、市場社会はどのように倫理的な評価/批判をされるべきだろうか。そのような問いに対して、現代のイデオロギー——リベラリズム、ネオリベラリズム、ネオコン、リバタリアニズム、平等主義、共同体主義、マルクス主義——は、いかに答えうるのか。

 そしてあなた自身は、なに主義なのか?

 時事問題や、あなた自身の日常的で素朴な倫理感覚からスタートして、さまざまな思想のエッセンスを、実感的かつ体系的に理解できる、驚きの1冊。

 

 

(趣旨)

 講談社メチエから今年の8月に出版された学部生向けの入門書(経済倫理、経済思想)を、著者と専門家・学生を招き、合評会形式で発表・講演を行う。学部生・院生が主な聴講主体。「たばこの規制」「ホワイトカラーエグゼンプション」「派遣社員」「グレーゾーン金利」「会社は誰のものか」「従業員の道徳と罰則」など、素朴で興味深い論点から説きおこし、様々な主義へ分類化・類型化するという手法が新しい。

 利益か道徳か、原理的な正しさか秩序ある安定か、慣習を重視する連帯か自律的な個人か、などの経済状況に関する様々な自問を行うことによって、「自分がどのような前提/イデオロギーを持っているか」「それを前提にしてどのように他人を説得するか」という問題意識に溢れた一冊。

 

 著者本人がまず易しく解説する。次に、社会思想・政治思想・経済思想を専門とする討論者・司会たちが、本書で分類された立場を明らかにしながら、批評を加える。また学部生の立場から本書の感想を述べてもらう機会も用意した。

 

(著者) 橋本努(北海道大学准教授)

1967生。経済思想、社会哲学専攻。『自由の論法』、『社会科学の人間学』、『帝国の条件』など著作多数。ハイエク論やマックス・ウェバー論も著名。どのようなリベラリズムをいかに擁護するかを徹底的に追究する、思想界の若手から中堅の中心的存在。

 

(討論者1) 村澤真保呂(龍谷大学准教授)

1968年生。社会思想史専攻。翻訳にタルド『模倣の法則』、ヤング『排除型社会』、論文に「食の倫理」「差異、反復、権力--模倣説」など多数。

 

(討論者2) 篠原雅武(日本学術振興会特別研究員、博士(京都大学))

1975年生。都市論、政治理論専攻。著書に『公共空間の政治理論』、翻訳にムフ『政治的なものについて』など。

 

(討論者3) 水溪悠樹(龍谷大学経済学部 4回生)

1985年生。来年度から大学院進学予定。大前ゼミ。

 

(司会)小峯敦(龍谷大学教授)

1965年生。経済学史、経済思想専攻。単著に『ベヴァリッジの経済思想』、編著に『福祉国家の経済思想』、『福祉の経済思想家たち』など。

 

 

 

2.

北海道大学における社会経済研究会でのアンケート結果です。(2008年11月6日)

 

リベラリズム(福祉国家型) 5人

地域コミュニタリアニズム 3人

リバタリアニズム 1人

共和主義 1人

新保守主義(ネオコン) 1人

 

以上、計11名

 

 この度は、アンケートにご協力いただいた大学院生ならびに教員の方々に、深く感謝申し上げます。

 議論のなかで、マルクス主義は規範理論的にはいろいろなタイプになりうる、ということが問題になりました。そうだと思います。これに対する私の考えは、第一に、マルクス主義は、どのタイプであれ、この思想を規範理論(あるいは政策理念)として擁護するためには、他の規範理論に接続されねばならないということ。第二に、マルクス主義者が実際にどういう倫理観を抱いたかということと、文献上、マルクス主義の経済倫理はどう語られたか、という問題は乖離しているので、この場合、なるべく文献的に考える必要があること。

 もう一つ、考えさせられたのは、地域通貨にコミットメントしている人は、地域コミュニタリアンなのかというと、そうでもないということ。なるほど、国家や市場に対抗するよりも、むしろこれらを補完するものとして地域共同体を考える場合には、倫理的に異なる発想になるわけで、考えさせられました。